Coju Hemmi Photography
見逃すと一生後悔する「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展」


「これを見逃すと一生後悔する」そんな絶対に観ておくべき美術展です。
この静謐。空気感。抑えられたトーン。誰もいない室内や冬景色・・・
テーマやフォーマットに至るまで、こんな絵画今まで観たことありません!

と、その興奮が隠せませんが・・・ついに観ました!
上野の国立西洋美術館で開催中の「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展 静かなる詩情」を。
今年、最も観たかった美術展。いや今までで最も観たかった展覧会の一つ。
名古屋から新幹線に乗ってわざわざ観に行く甲斐があったというものです。

思い起こせば、2007年に神戸で「オルセー美術館展」を観た時、展示してあったヴィルヘルム・ハンマースホイの作品「室内、ストランゲーデ30番地」(1904年作)に衝撃を受けてから、この日をずっと待ち続けていました。
それがついに叶った訳ですから、興奮せずにいられるでしょうか。

ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)はデンマークを代表する作家のひとりだそうですが、日本ではほとんど知られていませんし、欧米でも彼の没後ずっと忘れられていました。
しかし近年、パリのオルセー美術館、ニューヨークのグッゲンハイム美術館、ハンブルク美術館などで回顧展が開催され再び脚光を浴びているようです。
特にハンブルク美術館での展覧会は開館以来最多の入場者数を記録したそうで、人気の高まりがわかります。
今回の展覧会は、ロンドンでの開催に続き、日本では初めてとなる本格的な大回顧展となります。

彼の詳しいプロフィールや絵の特徴などは公式サイトに譲るとして、自分なりの見方を述べたいと思います。

彼の絵は「写真より写真らしい絵」だと思います。
すなわち彼の表現は非常に写真的アプローチである、ということです。
今から100年も前に、まるでマイケル・ケンナやレジーナ・デルイーズの写真のような絵を描いていたなんて。
実際、彼の絵は写真を元に描かれたものも多いようですし。
例えば今回の展示で、僕の最も好きな作品のひとつ「旧アジア商会」も写真を元に描いた作品だそうです。


≪旧アジア商会≫1902年 油彩、カンヴァス 個人蔵

この作品、実物を見なければわかりませんが、ピントが向かって左側の建物2階の窓枠に合ってます。
絵の中で微妙な被写界深度や露出のコントロールを行っているのです。
彼はこの絵を描いた11年後から死ぬまで、実際にこの建物2階に住んだそうですから、当時から彼の内に感じるものがあったのかもしれません。

また作品のフォーマットを自在に操っているところも写真的です。
カメラでいうと4×5、6×7、6×6辺りを中心に使い分けている感じです。
ロール・フィルムがコダックにより発売されたのが1889年ですから、写真が身近になってきた時代とも一致しています。
作品の「空気感」もまさにこの中判〜大判カメラのそれを彷彿とさせます。

画角やパースペクティブをいろいろ変えてるところも興味深いです。
まるで単焦点のレンズを上手に使い分けるかのごとく。

展示は 気△觀歃儔斑太検´況築と風景 珪啻 舷佑里い觴柴癲´甲もいない室内 再瓜代のデンマーク美術 というパートに分かれています。

彼は「北欧のフェルメール」と言われているからなのか、やたらと女性を描いた室内画が取り上げられていますが、僕は建築、風景、誰もいない室内が断然好きです。
もっとも「後ろ姿の女性」などは、これに加えても良いですが。
またこういったテーマも、極めて写真的と感じます。

一方、表現方法では全体にソフトフォーカスっぽいものとシャープなものとに分かれます。
ソフトフォーカスっぽいのは僕の好みではなく、一部にピントがビシっときているような作品がとにかく素晴らしかったです。

さて、もちろん図録を買いましたが、やはり絵の良さは全く伝わってきません。
絵画は実物を観なければダメ。図録は記録として見るものですね。
一方図録でも彼の写真的なアプローチに触れていました。
驚いたのは、以下のような記述があったことです。

『いかにハンマースホイの芸術が写真に近づいていたかは、雑誌「アマチュア・フォトグラファー」に掲載された1907年に開催されたロンドンでのハンマースホイの展覧会評に明らかである。著者は読者に、ハンマースホイの絵画を正確に学ぶよう忠告している。

「私たちは読者の皆様に、画家の作品を学ぶようになどという押しつけはほとんどしたことがないのですが、こと、ハンマースホイの絵画に関しては、読者の皆様にぜひ勉強してもらいたいと思うのです。[・・・]彼の絵は、自分の写真をよりよくしたいと熱く思わせてくれるからです」』
(以上、図録より引用)

ところでこの展覧会は、会期が残りわずかとなっています。
絶対にお見逃しなく!

ヴィルヘルム・ハンマースホイ展 −静かなる詩情−
会場:国立西洋美術館[東京・上野公園]
期間:2008年9月30日(火)〜12月7日(日)

art comments(9) trackbacks(1)
Comment








私も先週見に行きました。
後姿の女性に惹かれて行ったのですが、誰も居ない部屋が一番心に残りました。
少し哀しくてでも懐かしい暖かみがある光が差し込む部屋が素敵。
もう一度いきたいなー
from. | 2008/11/30 21:57 |
>???さん
印象に残る展覧会ですよね〜。

コメントが名無し状態になってますので、もしよければHNいれていただけると、どなたかわかります。
from. Coju | 2008/12/04 21:42 |
こんばんは、
あたしのブログに訪問していただきとても嬉しいですよ^^
ありがとう・・
また遊びに来てください。。

今度の更新に楽しみです^^
from. karen | 2008/12/04 22:16 |
失礼致しました。
mixiのノリで名前記入忘れていました。
マユミです。
from. マユミ | 2008/12/05 12:43 |
>karenさん
マイペースなブログですが、たま〜にはチェックしてみて下さい。
更新してるときがあるかも?

>マユミさん
マユミさんでしたか(^^)
マユミさんも東京まで?ご苦労様です。
中部や関西に巡回しないと移動コストがかかって大変ですが、今回のは「かけても良い」と心の底から思える、素晴らしい展示でしたね。
from. Coju | 2008/12/07 17:48 |
こんばんは。
TBありがとうございました。

驚くほど静かで
心地よい展覧会でした。
最終日は大勢の人で
賑わっていましたが
それでも「静」でした。
from. Tak | 2008/12/08 18:00 |
>Takさん
こちらこそありがとうございます。
最終日も行かれたんですね。
いいですよね!ハンマースホイ。
Takさんはロンドンの展覧会もご覧になってるんですよね。
すごいなぁ。
from. Coju | 2008/12/08 23:11 |
はじめまして。写真が好きで以前から拝見しております。
こちらのブログを見て、やっぱり行かねばと思って最終日に行ってきました。去年行った中で一番の展覧会でした。

私も最近ブログを始めたのでリンクさせていただきました。
from. ruteeru | 2009/01/01 02:28 |
>ruteeruさん
はじめまして。ブログ見ていただいて、リンクまでしていただいてありがとうございます。

ハンマースホイ良かったですね。
このブログがきっかけで、人が良い思いをできるなんて、これ以上の喜びはありません。

これからもよろしくお願いします。
from. Coju | 2009/01/01 11:58 |
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明日から国立西洋美術館で開催される 「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展のプレスプレビューにお邪魔させて頂きました。 ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン(Royal Academy of Arts)で今年の夏に開催された展覧会がグレードアップし
| 弐代目・青い日記帳  | 2008/12/08 17:58 |
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